カステラ×スポーツ
~おやつだけではない!カステラの新しい可能性~

対談カステラMEETSスポーツ

殿 村:福砂屋は1624年に長崎で創業しました。4年後には400周年を迎えます。400年という大きな節目を迎える今だからこそ、カステラの新しい可能性や新たな魅力を考えていきたい。そのひとつが東福岡高校ラグビーフットボール部(以下ラグビー部)のみなさんをカステラでサポートすることです。おやつのイメージが強いカステラですが、実は昔からスポーツ選手が練習の前や後、試合の時に食べてくださっているんです。 福砂屋のカステラは、創業当時から変わらない製法で、まったくの無添加です。 人一倍身体に気を遣うスポーツ選手にも、自信をもっておすすめできると思っています。

石 川:400年間、どの時代の人にも満足感を感じられる味、品質を届けられている素晴らしさはもちろんなのですが、変わらない製法、変わらない原材料でそれを実現されていることに、驚きと感激があります。 昔と今では、同じ名称であっても食材の質が異なります。作る環境も異なります。その中で同じものを製品として世に出し続けられているということは、単に同じことを継続するのではなく、進化、イノベーションがあり、そして職人さんが勘や感覚とともに自然となさっている作業の一つ一つにサイエンスが隠れていると思うのです。 高いレベルに到達しているアスリートがさらに進化していく過程に感じることと、同じようなものを感じます。

殿 村:カステラの材料は小麦粉、砂糖、卵、水飴です。もちろん添加物をいっさい使わない、昔の製法を守っています。その材料の選別、たとえば遺伝子組み換えみたいなものがないかとか、特にこだわりの卵については鶏の飼育方法や飼料にも様々な工夫をしています。 養鶏場では音楽を流してストレスをなくすということもしているんですよ。

石 川:最近になって、実は私も卵のチカラに再注目しています。艶やかな黄身、その黄身を持ち上げるようにしっかりとした卵白で構成される卵は、見るからに体に良さそうな、エネルギーの塊のように感じます。たんぱく質が多く含まれている卵白がしっかりとしている。ということは、たんぱく質を構成するアミノ酸の結合がしっかりとしているあかしですから、アスリートの体作りにもいい仕業をしてくれるのではないかと期待ができます。 だからアスリートにはいい卵を食べさせたいなと思っていて、そんないい卵を使ったカステラを食べたら、それはいい身体ができるだろうな、と思います。ただエネルギー源としてのカステラだけじゃなくて、シンプルに、エネルギーのもと、身体づくりのもとが入っているというのが、いいなあ、と。

殿 村:福砂屋の職人が作るカステラは、それぞれが全部違うんです。ミキサーではなく手で混ぜているので、その職人のその日の体力、筋肉によって少しずつ違いがあります。泡の大きさが違うんです。さらに最終的な仕上げの感覚も身体が覚えている。カステラというのは、全部、一つの窯を受け持つその職人ごとに違うんです。職人は、自分で作ったカステラがわかります。 職人一人一人が自分の作ったものに責任と誇りをもっているからこそ、それをお客様のもとに届けたいという気持ちは、職人が一番強いのではないでしょうか?

石 川:福砂屋のカステラがいいという理由の一つが、現代の製造工程、そしてこれまでの歴史や背景を食べてほしいんです。アスリートを食事面からサポートする際に、栄養素の豊かさや、安全性に留意することは当たり前です。 しかしそれだけではなく、責任と誇りを持って作られた、作り手の方の気持ちがこもったものを食べて欲しい、選手の体の中に入って欲しいな、と常々思っています。今のお話は、その点でもワクワクしました。

殿 村:カステラは贈答品としての文化が長かったのですが、もっと若い世代にデイリーで食べていただきたい、家庭にどんどん入っていくカステラであってほしい。だから大きな「竿もの」(贈答品で目にする長方形の1本ものカステラ)だけではなくて小さなもの、たとえば「フクサヤキューブ」のような、ちょっとおやつに買って食べる手軽なカステラというのもあるべきだと思ったんです。

石 川:カステラが、試合前の補食として良いという情報は、スポーツ栄養の世界ではかなり以前からあるものです。 その理由は、エネルギー源としての炭水化物が、原材料の小麦粉や砂糖などで、消化の良い状態で摂取できるから、だと思います。でも、それは単にカステラの栄養素だけに注目したものです。 福砂屋は東福岡高等学校ラグビーフットボール部に週に1度、練習後の補食としてカステラを提供していますが、福砂屋のカステラを食べることは、ただお菓子を食べるのとは違う効果を選手たちは感じているはずです。 それが週に1度あって、リズムも作れますし、直前まで激しい運動をして、交感神経が優位だった状態が、カステラを手にして、口に入れることでホッとして、きっと副交感神経が優位な状況に変わるはずです。こうしたスイッチの切り替えができて、リズムを作り出せることが大切です。 人はリズムのなかで生きているので、いいリズムを刻める環境は心からうらやましいと思います。

殿 村:お客様の顔ってなかなか見えないのですが、お母さんが子供たちに心を込めてお弁当を作るように、職人がラグビーをする高校生たちの顔を想像しながらカステラを作る、思いを込めて焼ける雰囲気になりつつあります。 手業を作り続ける我が社にしかできない、愛情の届け方なのかなと思います。機械では、同じことはできません。 選手たちがカステラを食べて結果につなげてくれて、逆にそれが社員の力になるんじゃないかとさえ思います。

石 川:ものは口に入れただけではなく、小腸で吸収されなければいけません。吸収するには、食べたものを吸収される形にしなければいけないのと、食べたものが、9~10mもある消化管を進みながら小腸まで運ばれないと吸収できないのです。 実は、運動した直後というのは唾液も出にくいし胃も動きにくいという、交感神経優位の状況になっています。そのため私は通常、運動の直後に固形物を食べてはダメ、と言っているんです。この条件では、カステラが食べられる範囲ぎりぎりのものです。 ですが、練習後にカステラを見た選手たちはまず、気分が明るくなるはずです。人が受ける情報は視覚によるものが7割と言われています。また、嗅覚を刺激する「香り」も大脳に直接働きかけるという特徴があります。食べ物には栄養の摂取という役割以外に、見た目や香りという要素があるので、カステラの色と香り、もちろん優しい甘さも選手を幸せな気分にしてくれるはずです。 そしてラグビーはコンタクトスポーツで、鍛えた体同士がぶつかり合います。そのあとで柔らかいものが提供されるというのも、すごくいいんだと思います。 地元の工場から出来たてが運ばれてきて、そんな競技の子が柔らかくて甘い香りのものに触れたら、と想像したらどんなにいいかと……。 口溶けが良くて飲み込みやすくて、毎日ではなく、時間を決めて。ただのカステラじゃなく、こういった背景をもったカステラで。一週間に一度の、最高のご褒美だと思います。

殿 村:福砂屋のカステラがここまで手作りだとは知らない人がすごく多いのです。添加物を入れていないので、賞味期限も長くはありません。福砂屋のこだわりが無駄じゃないと伝えることができれば、本望です。 先日、スペインのサンセバスチャンに行ったときに聞いた言葉があります。 「食べることは人生の最大の楽しみ」。 アスリートが、美味しく食べて幸せになってくれて、身体にいいならすごくいいことだし、お役に立てればいいなと思います。

石 川:殿村さんのお話をうかがって、福砂屋さんのカステラをスポーツとつなげるのが一層クリアになりました。 トップアスリートはみんな、「なんとなく」とか「それ風」じゃダメなんです。本当を追求しているし、本物の身体が欲しいし、本当に結果が欲しいし、妥協していない。そこが福砂屋と同じなんじゃないかと、そう思いました。 アスリートにとって、口にするものはすべて自分に責任があるんです。いいものを食べているというのは、いいトレーニングをしていることと直結しています。いいトレーニングをしたらいい休養をとらないといけないし、いいものを食べないといけないんです。 アスリートにとって、福砂屋のカステラはとても力強い味方になると確信しました。

殿 村:石川先生、本日はありがとうございました。

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